トゥラ刺繍
数あるハンガリー刺繍の中でも、特に可愛らしいデザインが持ち味のトゥラ刺繍。
カラフルな色使いはもちろん、小鳥やハートのモチーフ、アイレットによる図案がとても可愛らしく、思わず心が引き込まれてしまいそう。
今回はトゥラ刺繍についてご紹介します。
*写真お借りしました:★
<トゥラ刺繍が生まれた場所>
トゥラ刺繍はブダペストから東へ50kmほどの所にある、人口7600人程度の小さな町トゥラで確立しました。
google map:★
昔から農業が盛んで、収穫された野菜などの農作物はブダペストへ出荷されます。
町中にはお城やゴシック様式の教会、民俗博物館の他、なんと温泉もあるんだとか。
トゥラは民謡の町としても知られ、クラシック音楽で有名なバルトークは1906年に、この町で150もの民謡を収集しました。
トゥラ町についてはこちら:★(英語)
<トゥラ刺繍の生い立ち>
ハンガリーの農民達は祭日や冠婚葬祭に民族衣装を来てその日を迎える習慣がありました。
1880年ごろのトゥラの人々は自分達で衣装を作らず、隣町のボルドグという町で作ってもらっていましたが、制作費がだんだん高くなり、第一次世界大戦(1914)直前頃になると自分たちで刺繍を刺して民族衣装を作るようになりました。
それがきっかけで、次第に緻密なデザインになり、今へと続くトゥラ刺繍らしいデザインが確立されていきました。
その後厳しい時代に揉まれながらも、トゥラ刺繍は商業用として生き残りました。
<トゥラ刺繍の色の歴史>
生地:
Gyolcs;デョルチと呼ばれる白い布を使い、三角巾やハンカチ、シャツ、エプロン、服などバラエティ豊かに刺していました。
糸の色:
基本的には白色刺繍として刺していました。
経済と染色技術の発展に伴い、赤か青、もしくは両方を使って刺した作品が見られるように。
ただ三角巾とショール、男性用シャツだけは白刺繍で刺し、目立つ所にチューリップの図案配置して赤糸で刺しました。
(下記写真の赤丸のところ)
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1950年代以降になると緑や黄色も入り、カラフルな刺繍になりました。
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<トゥラ刺繍の特徴>
トゥラ刺繍の図案の特徴はアイレットホールと、
それを囲むようにサテンステッチで葉っぱのような部分を刺すこと。
蔦部分はアウトラインステッチで刺していきます。
アイレットのハートやロゼッタ、縁取りがリズミカルで見ていて飽きません。
アイレットの模様。 |
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なお縁取りはボタンホールステッチでかがるか、ハンカチの場合にはレースを縫い付けたりします。
<トゥラ刺繍の図案>
一般的なモチーフを紹介します。
現地ではもっとバリエーションがあるので、探してみてね。
ハートのモチーフ |
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チューリップのモチーフ |
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小鳥のモチーフ |
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アスター(キク科の花)のモチーフ |
猫の三つの足跡のモチーフ |
<トゥラ刺繍に使われるステッチ>
サテンステッチ(面の部分) |
アウトラインステッチ(線や蔦の部分) |
アイレットステッチ |
ボタンホールステッチ(縁取り) |
<トゥラ刺繍の本>
日本でトゥラ刺繍について掲載している本はただ1冊のみ。
書名:ハンガリーの小さな花刺繍 |
図案はシンプルながら可愛い図案も載っているので、気になる方はネットや書店で探してみてね!